誰でもない、あなたの心の声 ~そのこ~

ただの業者の人なのに、とても感じが良いから手作りのお菓子を渡したの。

パウンドケーキを一切れ。

喜んでくれて、社交辞令と思いつつ、次に来るのを期待してたけど何もなかった。

そもそも私が留守にしてたからなんだけど。

そしたらその次の週、彼は私にお礼の手紙(というかメモ)を書いてくれていた。

チラシを切ったメモ用紙に小さな字でお礼をたくさん書いてくれてた。

ずいぶん年も違うのに、私の胸はおかしなリズムで鼓動を打ってる。

毎日、必ず開くドレッサーの引き出しにそのメモを置いた。

一緒に住んでる人に見られるかも。

ううん、見つかるわけない。ここには私のメイク用品とかしか置いてないから。

いつも目に入る。もっと近づいて良いのかな。ただのお礼だから、これ以上近づくと怖がられる。

ずっとぐるぐるしてる。してるから、ただ、この手紙を大切に置いておくことにした。

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