有沙 何度か般若のお面をかぶった人間を見たことがあります。
今回は初めて見たときのお話を。
高校生のときでした。クラスでも明るくリーダー格の女の子がいました。
私は特に仲良くもしていませんでしたが、険悪になるようなこともありませんでした。
挨拶はするし、用があれば話すけど、単なるクラスメイト。友達では無いっていう感じです。
ある実習の授業中、手が空いた生徒は息抜きに友達たちと喋っていました。
私も誰かと話したいなぁと思い、周囲を見渡しました。
すると３～４人で仲良く喋っているグループの中に一人だけ般若の面をかぶっている女の子がいます。
制服で般若のお面。それでいて楽しそうにしていました。
「え？・・・」私は目を疑いました。
周りにいた誰も不思議そうにはしていません。
冷静さを取り戻すために一度前を向き直し、深呼吸をしてから彼女の方へ恐る恐る視線を動かしていきました。
すると彼女のいつもの笑顔があります。般若のお面を手にもっている、なんてこともありません。
そこにあるのはいつもの変わらぬ日常そのもの。
私だけが誰にも言えない不思議な光景を見て、現実から少し違うところに佇んでいました。