般若のお面 No.2

 初めて般若のお面をつけて談笑している同級生に遭遇してから3年経ったある日の夕方に、また私は般若のお面をつけた同級生に会いました。あの時とは別人です。
 その時、教室で同級生の男子生徒と将棋をしていました。あちらはかなり上手くて私が教えてもらっていたのですが、将棋で勝ちたいという気持ちがないため、単に遊んでいるだけです。この彼ですが、当時の私の恋人でもありました。しかし色々あって、多分この時は別れていた時期だったかと思います。
 私は彼とは別の人を選ぼうとしていた。彼は私に嫉妬させて、自分を選ばせようとしていた。そう、そんな時期でした。
 彼は「嫉妬させるための材料」として、自分に好意を寄せているMさんとよく過ごすようになりました。Mさんとは高校の部活も同じでしたし、同じクラスだということもあり、友達の一人ではあったようです。デートへ行った話などを彼の口からよく聞かされていました。
 しかし誰が見てもMさんより私の方が彼と親しく、また彼の態度も私へは特別です。Mさんは彼を好きなわけですから、特にそれを感じていたはずです。

 その日、将棋を楽しんでいた私たちのところにMさんは笑いながら近づいてきました。彼は入り口に背を向けていましたので、彼越しに笑顔のMさんの姿を目にしたのです。いつもの個性的なファッションのMさん。いつもの足音でこちらへ来るMさん。いつもと違うのはその顔に般若のお面をつけていることだけでした。
 

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